オーナーがスタッフを雇ったのは、一人では回らないし、かわいいスタッフに接客してもらったほうが受けるだろうと思ったから。自分は、直接、お客さんとは接したくなかった、という事情もあった。昼間は主婦の方に来てもらい、平日夕方と、土日は大学生に入ってもらった。構成としては悪くなかったはずだ。
シフトが組めない
主婦の方は子どもの都合や家の用事で急に休むことがある。学生は試験やサークル、他のアルバイトと掛け持ちしていて、こちらの希望通りには入ってもらえない。学生を多く雇えば雇うほど、それぞれの都合が複雑に絡み合って、シフトはますます組みにくくなった。
スタッフの都合がつかない日は、結局私がホールに出ることになった。接客の経験など全くないのに。
料理は冷めていく
ある日、私は次のようなことがあるので、スタッフに注意してくれと言われた。
スタッフがオーダーを取りに行くと、お客さんはまだ決めきれていなかった。そのまま二人は長々と話し始めた。厨房では料理が出来上がっている。早く持っていかなければ、冷めてしまう。
そのことをスタッフに伝えても、話好きなスタッフには、通じるはずもない。全く、うまくいかなかった。
一人でもできた、かもしれない
後になってから、オペレーションを変えた。
注文は紙に書いてもらうか、QRコードから入力してもらう形にした。ごはん、スープ、ドリンクはセルフサービスにした。それだけで、一人でも十分に回るようになった。
逆に言えば、最初からその仕組みにしておけば、スタッフを雇う必要はなかった。シフト調整に悩むことも、慣れない接客をすることも、なかったかもしれない。
まかないという地雷
スタッフには、まかないとして好きなものを食べてよいことにしていた。
ところが、食材によっては「それを食べられると、お客さんに出すものがなくなる」という状況になることがあった。まかない用に別で用意するわけでもなく、メニューと同じ食材をそのまま使うのだから、当然といえば当然だ。
タイミングも難しかった。スタッフが食事をとっている間、ホールは手薄になる。お客さんはそれを見ていて、注文しづらそうにしていた。
マネジメントという苦労
費用面だけではなかった。スタッフを雇うということは、人を管理するということでもある。
注意したいことがあっても、言い方を間違えると関係が壊れる。かといって何も言わなければ、問題はそのままだ。話好きのスタッフへの件もそうだったが、指摘してうまくいった記憶はほとんどない。
自分自身、店を回すことで精一杯で、人を育てたり導いたりする余裕などなかった。マネジメントの経験もなければ、そのつもりもなかった。ただ、誰かに来てもらって、動いてもらえればよかった。その認識の甘さが、あちこちに響いてきた。
さらに、スタッフへの話し方とオーナーへの話し方が違う、とケチをつけられたこともあった。そりゃそうだ。スタッフにやめられたら困るから、言い方には気を使う。オーナーはそうはいかない。でも、それを指摘されても、どうしろというのか。
コスト、オペレーション、そして人間関係。三重苦だった。
人件費と家賃は自腹だった
振り返ると、スタッフの人件費も家賃も、売上でまかなえていなかった。つまり自腹で払い続けていた。
スタッフを雇うことで売上が増えるはずだと思っていたが、実際にはそうはならなかった。仕組みができていないまま人を増やしても、コストだけが増えた。
なんとも、あほらしい話だ。でも、そのあほらしさに気づくまでに、ずいぶん時間がかかった。